びすたーらい、びすたーらい

”びすたーらい”とはネパール語で”ゆっくり”という言葉。そんな”ゆっくり”した国 ネパールの青年海外協力隊隊員の奮闘記

今までの常識が崩れた日 ~7月の稲刈り~

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ナマステ!

 

先週、ネパールの田植えをしてきたのですが、今週はなんと「稲刈り」をしてきました。

しかも同じ任地です。

 

namura.hatenablog.com

 

 

もちろん7月に稲刈りをすることなど、人生で初めての経験であります。

 

そして、仕事も含めれば10年近く稲作に関わってきた、私の田んぼに関する常識が崩れた1日でもあります。

 

 

どう常識が崩れたのか?書いていきます。

 

 

 

田植えした隣の田んぼで、稲刈り!?

「百聞は一見にしかず」まずはこちらを御覧ください。

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日本人が見ると、田植えをしたばかりの田んぼの隣に、稲刈りを待つばかりの田んぼがあるという光景が不思議に感じませんか?

 

 

ベトナムとか、フィリピンなど一年に何回も米を作る場所なら分かりますが、ネパールの山岳部での2毛作はあまり聞いたことがありません。

 

 

実はこの稲刈りを迎えたお米は、3月中旬に田植えをしています。

SRI(英:System of Rice Intensification ネ:चैते धान 日:米麦強化プログラム)という米の新しい栽培を試験的にやっているプログラムで、私の任地の一部でやっています。

 

 

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この取組みが先月、全国紙でも取り上げられました!

写真中央は、いつもお世話になっている農家さんです。

 

 

3月中旬というと、ネパールでは乾季の終わり

一番水が足りない時期でもあります。

 

そんな状況で、どうやって米を栽培しているかというと、この地形にあります。

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このSRIを行っている場所は基本盆地で、乾季でも山から水が集まってくる地形なので、乾季でも稲作をすることが出来ます。

 

 

 

「雨季に稲刈りが出来ない」という常識が崩れた瞬間

 

乾季でも稲作が出来ることは分かりましたが、収穫時期がアサール月という一年で一番雨がふる時期にあたります。

 

日本だと雨が降っている時に稲刈りなど、あり得ない話なのです。

 

なぜあり得ないかというと、米の水分量の問題があります。

 

日本では、米の水分量が15%を超えると「等外」となり、一番価格が安くなります。

 

米の水分が高いと呼吸量が増加し、品質の劣化が発生します。
更に高含水率はカビの発生が起き易く、貯蔵害虫の発生も考えられます。


玄米の含水率は15%前後が食味、貯蔵に最適とされている。
14%では食味の低下が生ずる。
13%では炊飯の吸水時にひび割れが出る。
15%は食するに最適な状態。
15%以上は上記の品質劣化や問題が起きる。

お米の貯蔵について

 

雨の降っている時に収穫したコメは、20%近い水分を含んでいるため、そのままでは販売が出来ず、乾燥機に長時間かけないと販売することが出来ません。

恐らく、水分量20%もあると、腐って長期保存が難しくなるでしょう。

 

 

では、私の任地では雨季に収穫したコメはどうしているのでしょうか?

 

答えは、乾かさずにそのまま「チウラ(干し米)」用として販売しています。

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干し米と聞くと、米を乾燥させて作るイメージがあります。

ですがネパールのチウラは、一度ゆでてから米を潰すので、水分量が多くても関係ないのだそうです。

 

チウラはネパールでもポピュラーな主食の一つなので、食文化が違えば、雨季に稲刈りをすることだって出来てしまうのです。

 

 

 

場所が変われば、農業も本当に変わる。

 当たり前の話なのですが、場所によって農業は大きく変わります。

 

青年海外協力隊の農業隊員は、そこの見極めがすごく大事です。

「この場所ではなぜ、こういうやり方で農業をやっているんだろう?」という疑問に目が向くかどうかが、活動のキーだと思います。

 

自分の思っていた稲作の常識をぜんぶ壊された日で、現実についていけない感じもありましたが、ネパールらしいやり方なのだと実感した稲刈りでした。